f <葦ケ原に舞う風編>

 

 


先の公儀剣術指南役「早乙女露詩之介」は、
石高二千石の大身旗本である。
その腕前は、将軍家剣術指南役柳生新陰流の当主をも唸らせるもので、
隠居前は、別途公儀の剣術指南役を仰せつかっていた。
その腕を見込まれて、隠居後の今に至るも各種剣術の試合などに
審判役として招かれることが少なくない。

だが、そんな露詩之介でも、さすがに今日は僅かに緊張の色がみてとれる。
それは冷え冷えとした朝の大気のせいだけでは、決してない。
実は露詩之介、書院番頭広義解釈人「拝一途」なる旗本からの依頼で
腕効きの剣術遣いによる、まさに「真剣勝負」の立会いに赴いているのである。

その剣術遣いとは、昨年正月に行われた御前試合において
四強に入った無念流平山道場の「日陰靄四郎」という若い侍だ。
この靄四郎、本名は「高木丈之進」といい、
七百石取の旗本、江戸北町奉行「高木帯刀」の四男である。

対するのは、同じく御前試合で丈之進を倒したものの、
惜しくも決勝で敗れた「秋月大二郎」という剣客である。
かつて江戸にその人ありといわれた「秋月平右衛門」の一子で、
親子二代にわたる剣豪といえる。

そして、時がきた。

「お初にお目にかかります。拙者、無念流高木丈之進と申します。
此度はご足労をおかけしてかたじけのう存じます。」
襷をかけまわした高木丈之進、すなわち日陰靄四郎の声が凛と響く。

「拙者は、秋月大二郎と申します。
早乙女先生にお立会い頂けるなど望外の幸せ。
死力を尽くして勝負に望みまする。」と、大二郎の目が涼やかに光る。

「うむ。拙者が早乙女露詩之介じゃ。両名のお手並み、とくと拝見させてもらうぞ」
「かたじけのう存じます」
「こう貴殿らをみるとかなりの腕のようじゃ。真剣にての果たし合いは
武家たるもの本懐とすべきところじゃが、遺恨もないと聞く。」
「いかにも、左様でございます。」
「これほどの真剣にての立会い、剣の道に生きるものとして覧たくない、といえば嘘になる。だが。」
「なんでございますか?」
「この果たし合いで、貴殿らほどの腕の持ち主のいずれかが命をおとすのは、遺憾なことではある」
「もとより承知しておりまする」と靄四郎。
「これも剣客としての定めであれば」とは大二郎。
「ふむ。覚悟は固いと見える。それほどに申すのならわかった。武運を祈る」
「ありがとう存じます」と二人の若い侍の顔に血が上った。

朝風に、葦ケ原の靄が吹き払われていく。
「両者、構えい」
「(真剣での勝負を言い出したものの、実際、人を斬ったことはない。
果たして秋月殿に勝てるだろうか)」と靄四郎の胸中は不安でいっぱいである。
「(この人を斬りたくはない、だが斬らねば拙者が斬られる。先ほどはああ言ったが、
まさにこの試合に何の意味があるのか)」と大二郎もわだかまりを捨てきれないでいる。
しかし「では、始めい!」と露詩之介の声が響いた刹那、
両者の頭の中は空白になり、全霊を込めた真剣勝負に没入していった。




そのころ、雷神党の放った矢からお雪をかばった佐助は、黄泉と現世との迫間にいた。
「佐助、お願い、死なないで」
ぎゅっと握った佐助の腕が、次第に冷たくなっていくのを感じるお雪。
「ごめんねごめんね、あたしのせいで。あたしの命あげるから、死なないで。」
と、お雪の祈りが通じたのか、佐助がふっと意識をとり戻した。
「お、ゆき。。」
「あたいはここよ。わかる?」冷たい佐助の手を握りしめるお雪。
「おゆき、助かったのか、よか、った」
「元四郎さんがきてくれたの」
「そうかい、じゃあ、誤解は、とけたん、だな。よかったぃ」
と安心した表情を浮かべる佐助。
「うん、早くよくなって。二人で一緒にお礼にいこ。一緒にだよ、佐助」
「いや、俺はもう助からねえ。自分のことは、自分が一番、わかる。」
「そんなこと言わないで!」
お雪の眼には涙が浮かんでいる。

「いや、これだけは、言って、おかなくちゃ、なら、ね、え」
「もう、しゃべらなくていいから!お願い」
「甲賀で、伴家に代わって、菊池が、仕切りの、頭領になった」
「え。。」
「菊池は、伴の、一族を、よく思ってない。おまえの、抜け忍の罪を、蒸し返そうとして、いる」
「そんな」
「俺が、守ってやる、つも、り、だったが、それも、もう、かなわねえ」
「何言ってるの。嫌だよ」
「お雪、逃げ、ろ。仇を討とうなど、と、思うな、追っ手がかかる、まえに、早く」
「わかった。逃げよ。あたいと一緒に」
「江戸は危な、い。京の都や堺、もだめだ。因州、池田家、の
伯耆にあ、る大山の麓に、摩論居士と、いう仙人、が、いる。そこへ。。」
力尽き、がくりと項垂れる佐助。

「ねえちょっと、佐助、いやだ、死なないで!」
「なあ、んちゃ、って」(むっくり)
瀕死のくせに、おちゃめな佐助ではある。
「なかな、か死なね、えな、体、鍛えす、ぎた、かな。へへ」
「そうよ、大丈夫。がんばって鍛えたんだもん、これぐらいの傷、直るわよ」
涙で顔をぐしゃぐしゃにしたお雪が無理に笑顔をつくろうとする。
しかし、お雪にも、もう佐助が助からないことがわかっているのだ。

「俺は、死んで、いく、けど、ちっと、も、さみしくねえ」
「え。。」
「おまえが、俺のために、泣いてくれるから、
佐助、佐助って、甲賀のみんなの分も、泣いてくれるから」
「さすけ。。」
このとき、佐助はにっこりと笑った。たしかに、笑った。
「俺は、ほんとは、おまえの、ことが、好。。」
「何?あたいのことが何?、佐助」
だが返事は、永久に返ってこなかった。
むせびなくお雪の声を耳にした堂悦は、佐助が黄泉の門をくぐったことを知った。


 

 

「ん、あれは刃の音。。」と、真剣の噛み合う音に引き寄せられるように
葦ケ原に、ひとりの男の姿が浮かびあがった。
♪じゃーん、じゃかじゃかじゃかじゃーん♪
鼻歌まじりに「果たし合い、か」とつぶやいたのは、仕掛人名和元四郎である。
どうやら、露詩之介が立会いをしているようだ。

「よし、この隙に。。」
気配を殺し、露詩之介の背後に忍び寄るズルイ元四郎。
露詩之介は果たし合いに夢中で、
彼らしくもなくあたりへの注意がおろそかになっているようだ。
それもそのはず、普通、凄腕同士の勝負というものは
寸分の隙が生じるのを狙って睨み合い、一撃で勝負が決まるものだ。
しかし、靄四郎と大二郎は全身全霊でもって斬り結んでいる。
一瞬足りとも眼が離せない壮絶さなのである。
靄四郎が裏籠手を狙って打ち込んだ一刀は、大二郎によって擦りあげられ、
その隙を狙って振り下ろした大二郎の一撃を、靄四郎が左手を添えた刀で受けとめる。
剣技は互角。だがしかしこれだけの斬り合い。長期戦になれば体力のあるほうが有利となる。
さて、その体力、どちらがあるのかといえば。。いや、言うまでもないだろう。
片や「大」二郎、片や「もやし」郎、である。
元々病弱な靄四郎の体力はそろそろ限界に近くなってきていた。
「(このままでは殺られる。超やべー)」冷や汗もんの靄四郎、
体力の残っているうちに渾身の力を振り絞って勝負に出た。

チャキーン(チャキーン)

同時に、彼方でも刀のぶつかる音が大二郎と靄四郎の鼓膜をうった。
見ると覆面の侍が露詩之介に襲いかかっている!

「何奴じゃ!拙者を幕臣早乙女露詩之介と知ってのことか!」
最初の一撃を天性の勘でかわした露詩之介の誰何に、覆面の曲者は攻撃で答える。
一撃、二撃。その覆面の刺客の太刀に迷いを見て露詩之介は不審に思った。
「(なぜか殺気を感じぬ。わしを殺すことをためらっておるのか。何故?)」
とはいえ露詩之介も、ふいをつかれた上に曲者がかなり遣うため苦戦している。
「(このような剣豪がおったのか。。しかし、この太刀筋、覚えがあるような。。)」
記憶をたどりながらも、刺客の刃を次々にかわす露詩之介が、
「お主、一刀流じゃな!」と露詩之介が決めつけると、刺客はピタリと静止した。

「それほどの腕がありながら、何故刺客なぞに身をやつしておる。
それだけ遣えれば、いずこのお家にも奉公がかなうであろうものを」
「(さっき佐々木に言った言葉を、今、俺がそっくり言われているとは)」
覆面の刺客、いや、仕掛人名和元四郎は心の中で苦笑した。
「(剣の腕が立とうとも立身出世はかなわぬ。それはお主も同じであろう)」
先程、己が手にかけた佐々木の言葉が頭の中で甦る。

「(もはや金のためにあらず、一人の剣客として、早乙女露詩之介と勝負するのみ)」
元四郎の体から激しい殺気が吹き出した。
「えい!」
初めて声を発し、晴眼から撃ってでる。
強く踏み込んだかに見えて、実は半歩その後ろに脚をとどめたため、
間合を外された露詩之介の剣が空を斬る。
その隙に、下段から伸びてくる元四郎の剣。
すかさず剣を返し防ごうとする露詩之介。
わずかに間に合わず切先が露詩之介の右手小指のみを捉えた。
ピッ。。
僅かだが、血しぶきが朝露に濡れた草を染める。
「(しまった)」と思った露詩之介の隙を、元四郎が認めた刹那、
「でやあ!」との気合声とともに元四郎の背中を日本刀の煌めきが襲った。
シャキーン
身をひるがえし、これを刀で受けとめる元四郎。
だがすぐに別の激しい突きが右側から元四郎を攻め立てる。
「(新手は二人か。さっき向こうで果たし合いをしていた奴らだな)」
と、間合をとって改めてその二人を見た元四郎はぎょっとした。
「(たしか大坂であった日陰靄四郎殿と、先の御前試合で立ち会った秋月大二郎!)」
「卑怯者め、名を名乗れ!」露詩之介をかばうように立ちはだかる秋月が一喝する。
「早乙女殿、大事ありませぬか」とは靄四郎。
「大丈夫じゃ。ちと遅れはとったがのう。参るぞ」
露詩之介、靄四郎、大二郎の白刃が、ようやく昇った暁の太陽に輝く。
一人ずつでも、かろうじて勝てるかどうかという程の手孰れを
三人相手にするとなると、まったく元四郎も分が悪い。
次々と攻め立てられ、防戦するのがやっとである。
斬り結びながら、靄四郎はふと覆面の刺客の刀に目がいった。
「(あの刀、見覚えがある。。)」
と思いながらも右から横面を狙う。
左からは大二郎が脚を薙ぎ払いに来、露詩之介は真っ向から面撃ちで攻める。
誰の目にも「やった!」と見えたその時、
元四郎は跳び上がって大二郎の攻撃をかわしざま、
右手で脇差しを抜き、弓手の太刀で露詩之介の刀を払い除けざま、
抜いた脇差しで靄四郎の攻めを防いだ。
くるりとまわりつつ間合をとった元四郎は、左右の剣を持ちかえ三人に対峙した。
「(あの剣法は!)」大二郎の脳裏に、御前試合で元四郎に負けた瞬間が甦った。
「に、二刀流!?」靄四郎がすっとんきょうな声をあげた。
「まさか、一刀流の巧者が、そのような。。」
露詩之介も通常では考えられない事態に思わず
「木枯らしの寒さ忘るる両刀(ふたがたな)」と一句詠んでしまうほどだ。
時刻はもう明け六つだ。当時の人は日の出とともに活動を開始する。
そろそろこの近辺にも人の往来が始まろうとしている。元四郎はあせった。
「でや!」
気合いの声とともに突撃を試みる。激しくぶつかる刃と刃。
何がどうなったのかわからぬ乱戦の中、
元四郎の愛刀加古太郎2尺3寸が露詩之介の胴を捉えた。
「むうん」と倒れる露詩之介。
「あっ」と駆け寄る靄四郎と大二郎。
「しゅわっち!」と、すかさず元四郎は逐電した。

「早乙女殿!」抱き起こした靄四郎の腕の中で、露詩之介は
「不覚を、とったわい」にやりと笑った。
「露詩之介殿、血が。。あれ、でてない。。」
ぱっくりと裂かれた着物の間から、鎖帷子が覗いていた。
「これは?」と尋ねる大二郎。
「今日の果たし合いは武家にとってはイクサと同じ。
拙者も武士の端くれとして高見の見物とは参らぬ。
せめて戦場にいる気概を。。とは申せ、この太平の世に鎧兜に身を包み、
具足をつけてというわけにも参るまい。せめて鎖帷子でも、と着込んでおったのが幸いしたわい」
「備えあれば憂いなし、とはこのことですな」
「しかしあの覆面の侍、鎖帷子に気付いておったはずじゃが」と露詩之介は首をかしげた。
「。。あの侍、もっちゃん、だよね」と大二郎。
「うん、刀、加古太郎だったしね」と靄四郎。
「ご丁寧に覆面に[丸に袋]の家紋も入っておったぞ」と露詩之介。
「それにあの剣法。普段は一刀流の太刀筋なのに、ふいに二刀流に替わるなぞ他には考えられぬ」
「拙者、先の御前試合にてあの剣法に敗れました」と大二郎がつぶやく。
「しかし、何故、露詩之介殿を襲ったのでありましょう」と靄四郎が怪訝な顔をする。
「うむ、恐らく貴殿らの果たし合いが無益なものゆえ、やめさせようとしたのではあるまいか」
「なるほど」
「あれほど真剣に臨まれなくば、我々も目が覚めなかったことでしょう」
「まことに」
「さて、とんだ邪魔が入ったが、お主らまだ果たし合いを続けられるご所存かな」と露詩之介が聞いた。
「いえ、なんだか気がそがれてしまって」と靄四郎が答える。
「拙者も、元四郎殿と斬り結んで肝が冷えました。
本物の実戦はああしたものなのでしょうな。
ひとつしかない命の大切さが身にしみてござる」と、大二郎もさっぱりした表情で応じた。
「なれば、今日の勝負は引き分けじゃな」
と露詩之介は満足そうに立ち上がったものの、「あいたたたた」と胴を押さえた。
鎖帷子を着ていたため命に別条はないとはいえ、日本刀は鉄の棒である。
それで思い切り胴を払われたのだから痛くない方がおかしい。
「では、拙者がおぶってさしあげましょう」
「いらぬわい」
「あはははは」
なごやかな雰囲気の中、三人の剣客は「(ありがとう、元四郎殿)」と大いなる勘違いをしていた。

 

 

葦ケ原から走りに走る元四郎の足は、家のある巣鴨の方へむかっていた。
「くそ、なんたることだ。手ごたえはあった。
しかしあの手ごたえは。。鎖帷子でも着込んでいたか。。」
無念さに歯がみをする元四郎。
「仕掛けをしくじった以上、しばらく身を隠さねばなるまい。
急ぎおきのを連れて上方へでも旅立たねば」とつぶやく。

そのころ巣鴨で元四郎を待つおきのは、
下僕の蔵吉になにやら嬉しげに語りかけていた。
「姐さん、なんだかご機嫌でござんすね」
「わかるかえ」と笑顔で答えるおきの。
「なんぞいいことでも?」
「おおありさ。。ややこができたんだよ!」
「へっ?ややこって、その、姐さんの御腹に?」
「当たり前じゃないか。。ふふ。あのひとの子だよ」
「そりゃあ、おめでとうございやす」と、わが事のように喜ぶ蔵吉
「ありがとうよ」と満面に笑みをたたえておきのが答える。
「それじゃあ、大急ぎで祝言の準備しねえと」
「いいよ、そんなもの」
「良かあ、ありませんやな。身近な人だけでも呼んでいたしやしょう」
「といっても、あたいもあの人も天涯孤独の身の上。親戚なんてありゃしねえし」
ふと、おきのが寂しそうにつぶやく。
「何をおっしゃいます。姐さんにも元四郎の旦那にも、たくさんのお仲間がいらっしゃるじゃありませんか」
「そうか、そうだったね。みんなここにきてから出会ったんだもんね」
「そうですよ」とにっこり笑う蔵吉。
「あの人の子だもの。男の子なら立派な剣客になるだろうね」というおきのに
「女の子ならどうなさるんで?まさか二代目女鼠ですかい」といたずらっぽく蔵吉が笑いかけた。

そんなこととはつゆ知らず、元四郎は走りに走る。
「(なんか朝から走ってばかりだな。走り過ぎて横腹が痛えや)」
頭から体まで汗びっしょりだ。
「(疲れたかな、目もまわるし腹も痛えし汗は気持ち悪いし)」
とぶつくさいいながら、腹の汗をぬぐった手をみて元四郎は立ち止まった。
「なんじゃこりゃあ!」。。手が真っ赤に染まっている。
振り返ると点々と血のあとが。着物をみるとぬらぬらと光っている。
汗だと思ったのは、ほかならぬ自分の血であった。
どうやらさきほどの乱戦の最中、知らぬ間に深手を負ったらしい。
極度の緊張のため、気付かなかったのだ。
「これだけ血がでてりゃ、目もまわるわなあ。腹も痛いわけだ、へへ」
他人ごとのようにつぶやいたと同時に、元四郎の体が、どうと倒れた。
「あれ、なんだ、力が入らねえ、おかしいな」
腹から血がとめどなく溢れだしているのだけがはっきりとわかる。
「還らなきゃ、おきの、の、ところ、に。還ら、な、きゃ」
遠くで物売りの声が聞こえる。その声がだんだん小さくなっていき。。。
剣客名和元四郎の時の刻みは、33年で止まった。

半里先の家ではおきのが御腹をさすりながら
「悪いお父っつぁんだねー、坊。どこで何してるのかねえ。早く還ってくればいいのに。
名前も考えてもらわなきゃねえ」と幸せそうな笑みを浮かべていた。

 



江戸を去ること数百里。
鳥取藩池田家は因幡と伯耆の二ケ国を領する32万石の国持大名だ。
その伯州に聳える、かつて大神岳と呼ばれた伯耆大山は
中国地方の最高峰で、古くから修験道の山として知られる。
その大山の西の麓に、摩論居士という一種の幻術使いがいるという。
この摩論居士、本名は宇佐麻呂。姓から考えるに宇佐神宮の神官、宇佐氏の後裔であろうか。

あれから1ヵ月。佐助の亡骸を手厚く葬ったくノ一お雪の姿を、
今ここ伯耆大山の麓に見い出すことができる。
お雪の表情には、これから迎えるであろう厳しい修業の日々を反映してか緊張と期待の色が見てとれる。

いったいどのような修業が彼女を待ち受けているのであろうか?
江戸では破魔崎の伝蔵がちゃくちゃくと悪の勢いを伸ばしている。
甲賀では、新たな勢力が台頭しお雪の命を狙っているという。
だが、彼女を陰になり日向になって支えてくれた佐助の姿はもうどこにもない。

本格派時代小説からSF忍者時代劇へと進化をとげる「女忍者お雪」新シリーズに乞うご期待!

 

 

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