向日葵

昨日の嵐はまったくもって酷かった。

寝る間も惜しんで精魂込めて育てた

作物が一瞬のうちに水泡と帰した。

愛情もかけ,手間隙もかけた。

少しでも美味しくなる様に

肥料も研究した。

農薬など使わずに莫大な時間と労力を

つぎ込み手作業でそれをこなした。

家族の者たちもみんな必死でそれに協力した。

それなのに・・・

「まったく神も仏もあったもんじゃない」と、

なぎ倒しになっている作物ひとつひとつを確認しながら

太平は苦虫を噛み潰したような顔でひとりごちった。

まったくもってこんな不条理なことがあるもんか。

これじゃあ頑張っただけバカみたいじゃないか・・・と。

 

 

 

その娘、皐月はひどく落ち込んでいた。

というより、まったくもって悔しかった。

せっかく昨日は前々から憧れていた想い人とやっと

ふたりっきりで会うところまで漕ぎつけていたのだ。

そう。まったく自分のことに気のなさげな相手に

あの手この手でアピールしつづけ

その甲斐あってか,いいかげん諦めたのか

思いもよらず向こうからお声が掛かったのだ。

。。。にもかかわらず、昨晩のあの嵐。

ずぶ濡れになるのは覚悟の上で家を出たまでは

よかったのだが、途中,渡るべき川にかかる橋が

荒れ狂う濁流の餌食になっていた。

「泳ぐか?」と自暴自棄で無謀な考えが一瞬脳裏をかすめるもの

そんなこと、できるわけはなし。

重い足を引きずりながら

とぼとぼと岐路についた。

 

 

 

その川で大切なものをなくしてしまった子供がいた。

友達が友情のしるしにとくれたちりめんの匂袋。

家に帰る途中でとおりかかった荒れ狂う濁流に

いまにも飲み込まれようとしている

薄幸な一匹の子猫をみつけた。

幼いいのちはそれだけ神にちかくて純粋だ。

すぐに持っていた荷物を放り出し

なんとか子猫を間一髪で救った。

ネコはぐっしょりと濡れそぼって

ガタガタと震えていた。

子供はネコをぎゅっと抱きしめてから

そっと安全な地上に下ろしてやり

帰ろうとした。

しかし、その後で周りをいくら見渡しても

あるべき物はそこには無かった。

今度会ったら、あいつになんと言えばいいんだろう・・・

 

 

 

人生には予測できない災難やかなしみが

降り注ぐことがある。

理不尽な仕打ちに精魂尽き果てることも

思わぬ悲劇に声も出ぬこともある。

それでもかならず

夜明けは訪れる。

自分の心根が正しければ

前向きでさえあれば

決して行き詰まることなどない。

替えってそれを養分として

己を成長させて行くだろう

そう,いつも向日葵の様に

太陽に向かってさえいれば・・・

 

惜しげもなく降り注がれる陽の光

露に美しく洗われた草花

生の喜びに湧き立つ様に

薫る澄んだ空気。

そして新しい朝の訪れを

いち早く、この世に生を受けるもの全てに

伝えようと躍起になる愛すべき小鳥達。

一日一日、世界は生まれ変わる。

まるでおろし立てのキャンバスの様に

 


自分に向けてのメッセージです。

お粗末でした。m(._.)m ペコッ

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