「あー…終わらねぇー…」
「涼はまだいい方だ。俺なんかまだ7教科あるんだぞ」
テスト期間中という修羅場の中、合同勉強会を催す事になったのだが、
腹が減ってはなんとやらという事で、近所のファミレスにやって来た。
メンツは毎度おなじみ、自分・涼・雄哉・加奈・美紀子…と、柊だ。
雄哉と加奈は頼りになるのだが、柊はどの程度勉強が出来るのか全く分からない。
それを見る意味でも、とりあえず誘ってみたところ、あっさりOKが出た。
「制御工学とか、どうしろってんだよ…暗記は嫌いなんだよ…」
「気合でおぼえるしかないだろ…」
勢力図は単純明快。雄哉と加奈はかなり出来るが、他3名は負け組だ。
「ほら。シケた顔してないで、さっさと注文決めてよ」
美紀子の振り下ろしたメニュー表は軽快な音と共に、涼の頭に縦に直撃した…が、
連日の寝不足のせいか、もはや反応がない。
「…俺、お粥…」
「何よそのジジ臭いオーダー…」
「胃が疲れてるんだよ…無ければうどんな」
料理が届くと、まずは腹ごしらえ。
満腹になったところで一品料理をつまみつつ勉強を勧めていくてはずだ。
「そういや、涼は徹夜明けか?」
「いや、テスト後に寝てるから徹夜明けじゃあない。
…つっても、朝食しか食ってないから胃が限界なんよ」
「ぁー…ってドコで寝てたんだ?」
「研究室で死んでた」
「あんたねー。それ本末転倒って言うのよ」
「徹夜で勉強してそのままテスト、その後に寝る。効率的だろ?」
「体壊さなきゃ、だけどね」
口数が多い3バカとカップルの2人でこれまでは均整が取れていたが、
最近は柊が加わった事で、どうしてもそちらに気をつかってしまう。
しかも涼と美紀子は、柊そっちのけで喋るから、余計疲れる。
なかなか話の輪に入れずに、疎外感を感じていないだろうか、とか。
そんな感じで精神的疲労が多いから「性格がジジくさい」と言われるのだろう。
…というのはどうも杞憂だったらしく、
柊は注文したオムライスが届くと、一心に食べ始めた。
スケートでの一軒といい、やっぱり…
しかし今回は、そんな周りの視線も気にせず、ひたすら食べる。
「よく食べるねぇ〜」
「ん…ん、今日はおなか空いてたから」
「まぁ、それは分かるけど、もっとゆっくり食べないと喉に詰まるよ?」
「ほぉ…美紀子らしからぬマトモな発言だな」
そしていつも通り「あんたねぇ」と睨まれる…が、
俺は、美紀子の口元が半笑いだったのを見逃さなかった。
こういう時というのは間違いなく、ロクでもないことを考えている時だ。
「ほら、百合ちゃん、ほっぺに卵ついてるよ」
加奈も柊を「慌てすぎ」となだめる。
「そうだよ〜」
今だ、と言わんばかりに美紀子も出てくる。
そして、柊に耳打ちを始めた。
「―――――――――――――――、―――――――――――」
「え…な、なんで?」
「―――――――、――――――――――――――――――」
「…何それ?」
「――…――――――――――、――――」
「!!」
慌てて美紀子から飛びのく柊。
と、今度は柊が美紀子に耳打ちをする。
「―、―――、―、――――――――――――、
――――――――――――――?」
「――――…――――――、――――――――――――――?」
「…―?」
「――…――、―――――――――――――――――――」
「…――!?―――!?」
「――――。―――――――――――、―――――――――――?」
「―…」
「―――、――――――――――、―――――――――――――――――」
「―…―…―、――――――――――?」
「―――、――、――――――――――――――、
―――――――――――――――――。
―――――――――、―――――――――
――――――――、――――――――」
「…!!」
「…何の話だ?」
「…ロクでもない話という事だけは分かる…つーか俺に聞くな」
何故か涼は、こういう事にはいまいち疎い。
当然、加奈と雄哉はとうに気付いているが。
「―、―、―、―――…―――――――――、―――――?」
「――――、―――――――――?――――――――――――」
「―…―――…―、――――――――――?」
「――…――?――――――」
「……」
どうやら密談は終わったようだ。
美紀子が離れても、柊は停止したままだ。
「…何吹き込んだんだよ?」
「え?ちょっと一般常識を」
「多分に間違ってると思うぞ」
「まぁ、最低限の心得と言うか何と言うか」
とりあえず…美紀子とは、アブノーマルな事はしていないはず…だが…
こういう知識分野に関しては、知ろうと思えば
どこまでも調べられるだけに恐ろしい。
「……」
と、顔を真っ赤にした柊が無言で美紀子を叩きはじめた。
「おぉっ、痛い痛い痛いっ」
美紀子はとても楽しそうだ。
これ以来、柊は半熟卵を一切口にしなくなったとか何とか。
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