私は、足の裏に奇妙な感触を覚えた。
丁度、土踏まずの中に収まるサイズの何か。
どうやら私は、その「何か」を踏んでいるみたいだった。
足をどけて拾い上げてみると…やっぱり分からなかった。
ので、ユウに聞いてみることにした。
一応、この雄哉というヤツは彼氏ではあるのだけれど…
未だに性格がよく掴めない、ナゾな人。
「というわけで、コレを拾ったの」
「ふーん…これはメモリースティックってやつだね」
「いや…それは書いてあるから分かるわよ」
「それもそうだねぇ…要は、パソコンのデータを入れておくものだよ
文章や写真、ゲームなんかをね」
「ふむふむ」
「…じゃなくて、誰の?コレ」
いつもこんな調子。
「さぁねぇ…中を見てみれば分かるかもね」
「中って…プライバシーの侵害よ」
「でもさ…拾った財布は、とりあえず見るよね?」
こういう屁理屈も、いつものこと。
「…まぁ…それなら…」
そして休日。
なんだかんだんで、ユウの家に行けると思うと
高揚してしまう自分が悲しくなる。
「いらっしゃーい」
4畳半1間のアパートがユウの家。
壁を覆う大きな棚には色んなものが置いてあるけど、
それ以外は殆ど無く、部屋はいつ見ても綺麗。
「はい、どーぞ」
パソコンの前の、2組の座椅子の片方に通される。
こういう所は、彼はすごく気がきく。
「…さぁ、見てみようかー」
いつの間にか用意されたジュースを口に含み、
手際よくメモリースティックを読み出す作業を見守る。
と、ディスプレイに写ったウィンドウには、
たくさんのファイルが表示された。
「さてさて…」
ユウが何か操作をすると、画面には小さな写真がたくさん並べられた。
「ふむ…風景画のようだね。これ」
写真を画面いっぱいに拡大して、1枚ずつ眺めていく。
これならプライバシーとは無縁かな?と安心できた。
赤い空。
風になびく草原。
夜の街頭。
逢魔ヶ時。
森の中。
銀色のワイヤーワーク。
流線型の車。
素人の目から見ても、どれも綺麗な写真だった。
「いやぁ…すごいね。これを撮った人は」
「そうねぇ…って?何これ?」
画面に、ピンぼけした写真が現れたのだ。
場所はおそらく学校。
黒い何かを写そうとしていた。
そんな写真が数枚続いて…
「百合ちゃん、百合ちゃん」
「ん?何?」
「これ、百合ちゃんのじゃない?」
私は、先日拾ったスティックを見せた。
「あ!私の…無くしてたんだ、これ。でもどこにあったんだ?」
「んっと、実験室のあたりに落ちてたよ?廊下に」
「へぇ…うん。ありがとう」
去ろうとしたところで、服の裾をつかまれた。
「…えっと…これ、何で私だって分かったんだ?」
「え…あ…いや、うん。悪気はなかったんだよ」
「……」
「……」
「……」
「……ごめん、見た」
「!!」
と、みるみるうちに百合ちゃんの顔が真っ赤になった。
悪いと思いながら、この反応の良さが面白いと思ってしまう。
「だ、大丈夫!言わないから!」
写真の後半に写っていたのは…授業中のタツを写したものばかりだった。
「…これって盗撮じゃないの?」
「いや…まぁ…写す機会がなくて…」
「あの位置ってことは…百合ちゃんの膝あたりから?」
「まぁ…そうなるかな…」
「大丈夫大丈夫。『美紀ちゃん以外には』言わないから〜」
「え!?ちょっ…」
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