無題

クライソラ
ソラヲオオウ ハイイロノクモ
ソノシタデ
ヒトビトハ キョウモ…

「…暗い」
今日の目覚めは悪いほうだった。
ブラインド越しに見える空は、重い。
今にも落ちそうな色だ。

一ヶ月以上、同じ場所に。
傷は増え、それでも体は癒えている。
白いカーテンで区切られた空間に、1日の殆どの時間を奪われて。
愉しみなどない。
ただ、そこに在るだけだ。
毎日、白に包まれて。

毎日想うのは、過去。
輝いていた。
好きなように生活し、好きなように遊び。
そんな、子供だった俺の、心の湖に、1かけらの破片が。
波は広がり、輝くかけらに魅せられ、心は大人へと移り変わってゆく。
しかし、かけらは、投げ入れた者によって取り除かれた。
波は消え、元に戻ってゆく。
湖は、最初に戻ってゆく。
何も知らなかった、きれいな湖面に。

何もかもが、何も無かったように、リセットされていく。
しかし水面下には流れが生まれ、かけらは確実に足跡を残す。
かけらは、麻薬のように、主を愉しませ、苦しめる。
苦しみの先には何も無い。
かけらをもつ者は、既にいない。

人はそれを、心の傷という。

傷を背負い、だが休むことを許されず。
かけらを持つ者は既にいなく、しかしすぐそこに。
体は近くても、心は遠い。
もう、かけらは手に入らない。
だけど、かけらを、持ち主の望む場所に。
傷を痛めながら、俺を変えた人の望むがままに。

結末は、見えていた。
かけらは再び持ち主の下に戻り、持ち主は、遥か彼方へ。
もはや言葉を交わすことも無い。
声も届かない、壁の向こうへ。
すれ違い、行き違いながら、心だけは、闇の中へ。