秋雨

何だかんだでこっちの作品も隠蔽仕様。



霊夢「今日は大雨ね…」

今日の幻想郷は珍しく雨が降っている。
土砂降り、とまではいかないが、風の音も鳥の声も聞こえない。
冷たい秋雨の音だけが幻想郷をつつんでいた。
妖怪達は、雨で妖力が洗い流されてしまうのを恐れて外に出ようとしない。
人間達は、それぞれの理由があって外に出ない。
魔理沙は用もないのにわざわざ雨にぬれるような事はしないし、
咲夜は屋敷の仕事に追われているし、
(スカーレット姉妹が在宅しているだけで、紅魔館は常に大忙しになる)
妖夢は半分妖怪だ。
…無論、妖夢も幽々子に言い渡された用事で忙しいのだが。

従って、博麗神社には霊夢以外には誰もいない。
八雲の3人など、こんな日には来るはずもない。
紫は眠っているだろうし、
他の2人雨を避けるように隙間に潜んでいるだろう。

霊夢「…一人、ね」

晴れた日には昼も夜も人がいるのだが、雨の日だけはとても静か。
こういう日は、霊夢にとっては数少ない、静かに過ごせる日なのだ。

霊夢「……」

雨は妖力・霊力を奪う。
普段大気に満ちている妖気・霊気も、雨と共に流されてしまう。
だから、雨の日は幻想郷に住む全ての人間、妖怪の力が吸われてしまう。
…力の強い者達にとっては、どうという事はないのだが。

霊夢「…はぁ…」

縁側に座り、雨に手をかざしてみる。
秋雨はとても冷たく、霊夢の手の温度を急速に奪っていく。
冷気はどんどん霊夢の手の感覚を無くしていき、指を麻痺させる…。

すると、霊夢は突然、何を思ったか
そのまま雨の降る外へと出てしまった。
雨は霊夢の髪を、服を、肌をあっという間に
濡らし、一気に体を冷やしていく。
しかし霊夢は、そんな事は全く気にしないという風に、
虚ろな目で雨の中で放心したままだ。

霊夢「…誰も来るはずがない。私もそれを望んでいたはず。
   静かに、一人で過ごす日なのに……一人……独り……」

…そのまま霊夢は、人形のように水溜りの中に倒れてしまった。
それが、雨に霊力を奪われたからなのか、
体が冷え切ってしまったからなのかは分からない。
倒れると共に、水が弾ける音が響く。
しかし、そんな音すら雨音に掻き消されてしまう。

霊夢「…魔理沙だって…用もないのに、雨の中を来るはずが無いわ…
   私も、所詮はそんなもの、か…」

水溜りの水が、口に入るギリギリのところにある。
服の前半分はもう泥だらけだろう。
体温も、もはや無いに等しい。

霊夢「…魔理沙? 何で私が…魔理沙の事なんか…何で…魔…理沙…」

それっきり、霊夢の意識は途絶えてしまった。


同日、魔理沙はというと、
パチュリーと共同で新しい符の試作品を試すところだった。

コンコン。

魔理沙「開いてるぜ」
咲夜 「約束どおり、新しい符を持ってきたわ」
魔理沙「ふむ…」

一見、咲夜は普段と何ら変わりが無い格好をしている。
…が、注意深く見るとおかしい部分がある。
それは、この雨の中を来たというのに、服も体も一切濡れていないのだ。
この符は、雨を遮断するためなのだ。

魔理沙「どんな感じだ?」
咲夜 「ええ、前は空気も遮断してしまってたから息が続かなかったけど、
    今度は全く問題ないわ。風を普通に感じる事が出来る」
魔理沙「それならバッチリだな。魔力の消費はどうだ?」
咲夜 「そうね…普通に飛ぶより倍食うって程度よ」

つまり、彼女達にとっては何も問題ないということだ。

魔理沙「…あ、魔法や符術は使えるのか?」
咲夜 「それは試してないわね…そこは魔理沙が確かめてちょうだい」
魔理沙「そうか…最後に、その符の効果時間は?
    スペルカード並じゃあ困るぜ」
咲夜 「そっちも大丈夫。魔力が尽きるまで使えるわ」
魔理沙「それなら完璧だな。パチュリーに何かお礼しないと」
咲夜 「あ、パチェ様から伝言よ。
    「何もしてくれない事が最高のお礼」ですって」
魔理沙「ほー、そうかそうか。ならば是非、手土産でも持っていかないとな」

つまり、何かちょっかい出す気満々。

咲夜 「…まぁ、程々にね」

そう言って咲夜は紅魔館へと帰っていった。
魔理沙も身支度を整え、テスト用の符を持って外へ出る事にした。
無論、霊夢に自慢するためだ。

テスト用の符とは、最近、他の人の符(主にパチュリー)
を試してみる事にはまっているからだ。
曰く、「見聞を広めるためだ」との事。
とりあえず、初級の5色は使えるようになったが、
火&木符のような難しい符はまだ使えない。
日符と月符は最初から諦めているようだ。

魔理沙「…んむ、こんなもんか、っと。……反水符『リジェクトレイン』!」

呪文を唱えた刹那、魔理沙の体を水色のオーラが包み込んだ…が、すぐに消えた。
魔理沙は若干の気だるさを感じたが、すぐに気にならなくなった。
符術が体に染み込んだ証拠だ。

玄関で、まずは手だけを雨にさらしてみる。
しかし、水が手に当たる感触も、雨水による体温の低下も見られない。
そのまま思い切って外に出て見たが、
まるで薄い膜が体を包んでいるかのように雨を弾いているのが見える。

魔理沙「よっし…いっちょ行ってみますか」

箒に跨り、地面を蹴る。
雨を切り裂きながら、魔理沙は一気に飛び去った。


魔理沙「いや、完璧だぜ、これ。これで突然雨が降っても安心だな」

もう少し改良して、正面だけ風も防ぐようにすればもっと速度を上げられるな…
などと思案しているうちに、眼下に博麗神社が見えてきた。

魔理沙「きっと驚くだろうなー。何たって、雨に濡れないんだもんなー」

珍しく上機嫌で降下していくと…何やら目につく色彩が見えてきた。
紅白の袴。間違いなく霊夢だ。
しかし、雨の中、ピクリとも動かない。
しかも近づいてみると、立っているのではなく倒れていた。

魔理沙「…!!」

一気にスピードを上げた。
風切り音で、雨音も聞こえなくなる。
だけど、心臓の鼓動だけがやけに魔理沙の耳についた。
呼吸も一気に激しくなり、全身に煮えるほどの熱い血が駆け巡るようだった。
地面に当たるギリギリのところで急ブレーキし、そのまま箒から飛び降りる。

魔理沙「霊夢!!おい!どうしたんだ!?…くそっ!」

抱きかかえて呼びかけたが返事はない。
魔理沙が集中を解いたため、リジェクトレインの効果が消え、
魔理沙も雨に濡れはじめていた。
霊夢の頬や手を触ってみると、氷のように冷たい。
さらに魔理沙の全身に血が昇っていく。
もう息もマトモにできていない。
それでも、魔理沙は動き出した。

まずはすぐ近くの縁側に霊夢を寝かせる。
特に厚い冬用の布団を引っ張り出して敷き…というところで、
自分の服が濡れてまとわりついてくるので、そのまま服を脱ぎ捨てた。
大きなタオルを数枚、風呂場から持ってきて霊夢の横に置き、
ずぶ濡れ&泥だらけになった霊夢の服を脱がす。
それからタオルで体を丁寧に拭き、霊夢を布団へ運んだ。

魔理沙(思いつく事は一通りした…他は何だ?私に何が出来る!?)

助けを呼ぶ?その前に霊夢の容態が変わるかもしれない。
頼りになるのは咲夜だが、博麗神社からは結構な距離がある。
神社のもので何とかするしか無いが…いかんせん、
人の家では勝手が全く分からない。

魔理沙「…そうだ!着替え!冬用の服くらいそろそろ出しているはず!」

魔理沙は立ち上がり、部屋を探索しようとした…が、
自分の鞄に蹴躓いて盛大に転んでしまった。
その痛みと、自分の不甲斐なさに、少しずつ涙が溢れてくる。

魔理沙「…うぅ…くそっ!…ん?」

立ち上がろうとして、魔理沙は気が付いた。
鞄の中身がはみ出て、パチュリーの符が少し見えている。

魔理沙「…そうだ…火符!あれなら…」

すぐさま鞄を漁る。すると、簡単に火符が見つかった。
まずは布団を剥ぐ。霊夢の肌が露出したところで、その上に符をかざす。

魔理沙「……火符『アグニシャイン -1厘-』!」

たった1000分の1の力に押さえ込まれた火符は、ほんのりと赤い光を放ち、
こたつよりややぬるい温度を放つ。
自分の手で触ってさらに温度を調整し、霊夢の体に貼り付けていく。

…少しすると、紫色になっていた霊夢の唇に少しずつ熱が戻ってきていた。
改めて霊夢の肌を触って見ると、やはりほんのりと暖かくなっている。
それが確認できたと同時に、一気に魔理沙の気が抜けてしまった。

魔理沙「なんとか…良くなったか…焦ったぜ…っっくしょん!!」

くしゃみをして、初めて気が付いた。
濡れたからといって、服を脱ぎ捨てたままだったのだ。
それを認識してしまった瞬間、今度は自分の体温が一気に減った気がした。

魔理沙「うぁ…寒い…けど服は濡れているし…あ」

目の前には、大きな布団と暖かい火符と35℃くらいの人間。

魔理沙「…ここでいいや。何だか疲れちまったしな…」

結局、残りの服を全部脱いで、霊夢と一緒に眠る事にした。
その全身で、霊夢と熱を共有するかのように…


霊夢 (…確か…雨に打たれて…倒れて…でも熱い…?)

霊夢はその日の夕方に目を覚ました。
やたらと体が熱い。
多分、誰かが自分を介抱してくれたのだろう…
その誰かに感謝しつつ、霊夢は体を起こした。

霊夢 「……!?」

自分の裸体が見える。
つまり、今の自分は服を一切着ていない。
その代わりに、妙な符があちこちに貼られていた。
自分の服は縁側に投げてあり、その近くに魔理沙のモノと思わしき服もある。
そして…自分の左隣に、同じ布団で、
同じく服を着ていない魔理沙が眠っていた。
魔理沙は霊夢が起き上がったせいで体が冷えたのか、
眠ったまま布団を霊夢から奪おうとしている。

霊夢 「これは…え?拉致監禁?でも魔理沙が?しかもうちの神社で?…えぇ!?」

疑問は山ほどある。
しかし魔理沙は起きる気配が無い。
…まだ外は雨だ。どうせ来客は無いだろう。
霊夢は札を剥ぎ、効力を封殺してから枕元に重ねていった。
そして再び布団に潜り…魔理沙の頬に軽いキスをして、
魔理沙の腕を抱いて、再び深い眠りへと落ちていった…


その後、目が覚めた時、
2人とも裸だったのでものすごく気まずかったとか何とか。


あかんねん!こんなんじゃあかんねん!
前回は隠蔽指定を受けてしまったために、今回は真面目に書こうと思ったのに…
気が付けばエチーなのが含有率10%を突破。隠蔽指定再び。 (結局、隠蔽解除したけどね)

本当は爽やかに終わるはずだったのにー。草案段階ではそうだったのにー。
火符を絡めてしまったがためにトゥルーエンドに到達できず。
あそこで火符出さなければ本来目指した終わりに行けたのに…
でも符は出したかったんです。
で、結果的にえちくなってしまいました。
えっちでもいいと思うのですよ!(よくない

…まぁ、ネタはあと2つはあるので、あと2回は更新されるはずですが…はてさて。