魚・肴・サカナのページ (祝島ネット21会報に掲載したもの)

魚・肴・サカナ(1)〜ヒョコタン〜(2002年4月号)
 ヒョコタンというのはギダ(ベラ、ギザミ)の仲間で標準名はササノハベラと言うようです。祝島では磯で、ほとんど一年中釣れるように思います。先日、遠足にいったとき、子ども達が数匹釣っていました。体の表面がぬるぬるして鱗をとるのが大変ですが、結構うまい魚で岩場にいます。
 祝島の浜の海で子供時代泳いだことのある人がよく見たのは、シマギダとかモンツキーとかいっていたギダで、海底が砂場や小石が多い所だったと思います。祝島では冬場は釣れません。このシマギダやモンツキーは結構高級な魚だそうです。鱗が軟らかいので、煮たり焼いたりするとき、鱗をとらないでもいいと言うことです。標準名はキューセンでシマギダはメス、モンツキーはオスです。ヒョコタンより一クラス上の魚です。 ギダには他にシンキリー(多分キヌベラ)やハナアカー(多分ニシキベラ)というのがいました。ちょっと小ぶりなギダです。大きいのではモブシ(コブダイ)がいます。モブシもギダの仲間のようです。
 子供時代には釣ったことがなかったギダの仲間で釣れるのがムギという魚です。これはオハグロベラです。島の人は食べないようです。私もまだ食べたことがありません。
 夏の祝島に帰ったり、来られたとき海をのぞくと、どのギダかきっと目にとまると思います。
 図鑑によると広島あたりではヒョコタンはヒョウタンキザミというそうです。祝島と一番近い呼び方です。


魚・さかな・肴(2) 〜クロゴチ〜(2002年7月号)
 私の同級生で、「クロゴチ」と言う名前を聞いて、懐かしさをおぼえる人がどれだけいるでしょうか。10人くらいじゃないかと思います。
 4月の終わり頃から6月一杯まで、磯のウゴ釣りで良く釣れる魚です。


クロゴチ

釣れた魚をこんな風に
ぶら下げて石や瀬の上
を釣り歩いていました。
私の家は東方(ひがしがた)ですから釣り場は自然とナカバエからチョンギー(オキナ)にかけての磯でした。
波打ち際の岩陰や石の間にひそんでいます。私は今も毎年一回以上息子と、このクロゴチのウゴ釣りに行っています。
 メバルの仲間でしょうが、いかつい顔をしています。図鑑で調べると標準名は「ムラソイ」のようです。
少し磯臭いのですが、結構うまい魚です。
子供の頃は、焼いて味噌に付けて食べるというのが普通でした。
 この頃は、クーラーに入れて持ち帰り、フライや刺身にしても食べてみますが、うまいです。
 ちょっと面倒くさいけど、身を包丁でたたいて、ミンチにして塩をきかせて、シイなどのはっぱにはさんで七輪で焼いて、「ビールのつまみ」に、とやってみると、なかなかの味と気分です。[このやり方は「野外手帳」(白土三平著)という本に出ていました。]
 クロゴチは夏になると全く釣れなくなります。菜食主義にでもなるのでしょうか。
形は全く同じで、「モゴチ」というのがいます。浅瀬の藻のあるところにいて、クロゴチが陰の黒色ならこちらは藻の色に近い茶色主体です。

魚・さかな・肴(3) 〜チダイ〜(2002年10月号)
 マダイによく似た魚です。

若いチダイ

小さいチダイをこんな風に刺身にしたもの
を貰いました。綺麗です。
 エラぶたのふちが赤い血の色だから、この名前が付いたのではないかと思います。
 マダイは尾鰭の端が黒いけどチダイはその黒色が有りません。また、チダイは背鰭に1本長いのが有るのも、マダイと見分けやすい点です。形はマダイより円めで、厚さが少し薄く、色も薄いです。小さい頃は華奢な感じですが大きくなるとデビチン(おでこ)が出て、同じ大きさのマダイよりはずっといかつい感じになります。
 味はマダイに負けないくらいです。煮付けは淡泊ながら特に旨い。瀬戸内海ならではの味と、瀬戸内海人の私は感じます。マダイより少し身がやわらかいように思います。
  35年くらい前には、このチダイを釣りに祝島から南に向かって2時間くらい船を走らせて出ていました。伊予灘の中央あたりだったしょう。みんな小さい船でした。

魚・さかな・肴(4) 〜鰆(サワラ)〜(2003年1月号)
 鰆を今まであまり釣ったことはなかったのですが、昨年の夏には何匹か釣れました。

サワラ用釣り針
釣り方は、大きな釣り針と靴べらを組み合わせたものを先に付けて、水面下五メートルくらいの所を引っ張るというやり方です。祝島では鰆釣りとは言わず、鰆漕ぎ(サワラこぎ)と言います。釣り上げると1分くらいで死んでしまいます。マグロのように、かなりのスピードで泳いでないと生きていけないようです。
 見かけは青魚ですが、身は白身魚に近い色をしています。脂肪分が多いようで、舌触りはトロに近いものがあります。(だから白身魚のように透明感はないです。)刺身でもうまいし、塩を付けて冷凍しておくと、結構うまい状態で焼いて食べられます。
学校の給食で時々「鰆の竜田揚げ」が出てきて好きなので作ってみると、これもなかなか良いです。
 鰹のたたき風に、たたきにすると、味はいいのですが、冷凍したものはやわらかすぎるようです。
旬は冬から春ということです。
 

約3キロの鰆

顔が以外とタチに似ています。

左がシイラ、右が鰆

魚・さかな・肴(5) 〜オツムギ・アブラメ〜 (2003年4月号)
 春から夏にかけて、磯で釣れる魚に「オツムギ」と「アブラメ」がいます。
祝島で「オツムギ」というのは、図鑑では「アイナメ」で、祝島での「アブラメ」というのは
「クジメ」ということす。
 「オツムギ」の小さいのは「アブウゴ」と言って呼び分けていました。祝島では「オツムギ」は出世魚というわけです。「オツムギ」の方が大きくなります。
 島のおじさんが中の波止から、2kg位の「オツムギ」を釣って持って帰るところに出会ったことがあります。
普通は1kg位までです。
 「アブラメ」は1kg足らずのしか見たことはありません。
 「アブラメ」はまたの名を「モミダネウシナイ」というのだ、と祖母が生きている頃言っていました。稲の苗を作る頃が「アブラメ」の旬で、稲の苗用の籾をこの「アブラメ」と交換してしまうくらい旨いと言うことのようです。夏には味が落ちます。
 「オツムギ」の名前は紬(つむぎ)の模様から来たのかなと思っていましたが、自信はありません。
 「オツムギ」は大きな石の陰や穴の中に潜み、「アブラメ」は藻の中に潜んでいることが多いようです。色もそのような保護色になっています。
8年くらい前の春、姫島に行ったとき、旅館の夕食に「オツムギ」の刺身と汁(うしお汁)が出ました。
「アイナメ」と言っていたように思います。姫島での呼び方は確認していません。 

魚・さかな・肴(6)〜アジ〜(2003年7月号)
 祝島でふつうアジというのは「ヒラアジ」です。
ヒラアジ
マルアジ
左がマルアジ 右がヒラアジの断面

 一年子は「デンゴ」といいます。
 「アジ」という名は、味がよいので付いた名前、と言う説が江戸時代に紹介されてい
るそうです。
 よく似たアジに「マルアジ」がいます。祝島では5月頃から釣れ始めます。その頃祝島近辺に群でやってくるようです。場所を少しずつ移動しながら8月頃まで釣れます。
 マルアジの子はデンゴより青っぽいので「アオコ」といいます。
 ハマチ釣り(ノマセ)のエサにはこちらの方が良いとされています。
 人間はマルアジよりヒラアジの方に数倍高い値を付けていますが、ハマチは反対のようです。
 ハマチはアオコ(マルアジ)の方が良く泳ぐから食欲を涌かせるということのようですが、私はゼエゴ(側線のギザギザ)が小さいのも関係があるのではないかと思っています。マルアジの方が飲み込みやすそうなのです。
 中学生の頃、祝島で夏に波止の先からムシ(ゴカイ)を付けて竿で釣っていたのはヒラアジの方です。ギューと来る引きが特徴でした。
 マルアジの大きいのは別名オキアジと呼ばれ、波止から釣れたことはありません。
 祝島の船釣りで時々釣れるアジに「バカアジ」というのがいます。ヒラアジと思うのですが、バカにでかいのです。ばかでかいから付いた名前なのでしょうが、大味でもあるようです。
 10年くらい前にヨボシで釣ってから、それ以後釣れず、写真もありません。60〜70cmはあったように思います。
(追記 マルアジは5月〜8月以外にも釣れることはありますが、マルアジ狙いで釣れるシーズンは5月〜8月頃です。)


 魚・さかな・肴(7)〜ハマチ〜(2003年10月号)
 祝島では春から初夏にかけての小さい頃は「ワカナ」、夏の終わりから秋の間は「ヤズ」、1年以上経ったものから「ハマチ」と呼びます。目方で言うと1kgを越えるものくらいから「ハマチ」と言うようです。8月の中頃に300g〜400gだった「ヤズ」が12月頃には1kg位に成長しますが、この頃には祝島周辺から遠ざかる年が多いようです。「ハマチ」が大きくなった呼び方に「ブリ」というのがありますが、祝島では「ブリ」という呼び方をしません。
 漁協では「ハマチ大」とか「ハマチ大々」とか表示していました。
 ヤズは、神舞の入り船の日に、三浦で船をつないで一杯飲むときのいい肴です。
 ハマチはやはり冬が一番旨いようです。三枚に下ろして冷凍しておくと、いつでもタタキにして食べられます。カツオのタタキより旨い!と我が家周辺では評判です。
胃袋など内臓を串に刺して焼いてみましたが、旨い!と言ってくれる人は我が家には私しかいませんでした。
 鯛釣り用のサガリ(サビキ)で釣ったときには最長55分かけて上げました。引きが強くなかなか弱らない魚です。このときのハマチは8.8kgでした。今までで、わたしが釣って漁協に持っていったハマチの最高記録は9.2kgです。一昨年9.3kgのハマチが上がったそうです。ここら辺が祝島近辺で上がるハマチの最大級です。逃がしたのはもっと大きいのがいると思いますが。
 長い時間かけて釣り上げたハマチはくたびれてイケマで死んでしまうことがよくあります。シメた魚と死んだ魚は味も見た目も違います。イケマで死んだ魚はエラブタが開き、すぐ硬直します。シメた魚は体は軟らかいのですが、身(肉)は締まって白っぽく生臭さが少ないです。ハマチも例外ではありません。
 また、小さい魚は釣ってすぐ食べる方が旨く、大きいのは少し置いてから食べる方が旨いようです。ヤズはその日か次の日、ハマチは2〜3日後からの方が旨いと思います。
イケマの中のハマチ スイタの上のハマチ モツを焼いてみました。

魚・さかな・肴(8)〜コチ・タバコスイ〜(2004年1月号)

コチ700g
コチの尾鰭
コチの刺身


 「コチ」はあまり釣ったことのない魚ですが、この1月に伝馬船でサビキの釣り糸を漕いでいたらたまたま釣れました。刺身にするときれいな白身で透明感があります。唐揚げも旨い。煮付けも旨い。惜しいことにめったに釣れません。これから狙いたい魚です。砂地にいる魚で建網に時々かかります。
 同じく砂地の、浅い所にいる魚で、コチの体によく似た小さい魚に「タバコスイ」というのがいました。いましたと書きましたが、最近見なくなりました。子どもの時には、東の波止の中の砂地や磯の砂地の所でよく釣れていました。頭のてっぺんに背鰭が1本出っ張っていました。「タバコスイ」というのは祝島の方言でしょうが、顔の表情が何となくとぼけて煙草を吹かしている感じなのです。よく付けたと感心する名前です。標準名は何というのかはっきり知らないのですが、にぎった感じから言うと
「ヌメリゴチ」が似合いそうです。にぎるとぬるぬるしていました。「タバコスイ」も、唐揚げでも煮付けでもきっと旨いと思います。

(何回か狙ったけどなかなか釣れないものです。)













魚・さかな・肴(9)〜カンサク・ヤハギ〜(2004年4月号)

カンサク
ヤハギ
ヤハギのセゴシ(左)とデンゴのセゴシ(右)

 祝島ではイシダイの子供をカンサクといいます。春の終わり頃から波止の中で泳いでいます。
 模様の似ている魚にオヤビッチャとかロクセンスズメダイというのがいます。この二種はスズメダイの仲間です。
 スズメダイは祝島ではオセンコウとかヤハギやヤハンドウとか言います。ヤハギはスズメダイ科の中では一番寒いところで住める種類のようです。オヤビッチャやロクセンスズメダイが祝島で見られるのは夏だけです。黒潮に乗って祝島まで来たのでしょう、夏の盛りに子供が泳いでいます。  一年間祝島で過ごすことは無理なのでしょう。冬が近くなると姿を消します。
 カンサクは大きくなると祝島ではクロクチと呼びます。雌と雄では薄くなる度合いが違うようですが、縞が薄くなり、口の周りが黒くなるからでしょう。
 クロクチになると刺身など旨い魚です。めったに味わうことはないのですが、これから夏が旬と言うことです。
 近い仲間にイシガキダイがいます。小さいのが稀に釣れるからいるのでしょうが、大きいのはなかなか見る機会がありません。
 オセンコウは祝島では焼いたり、セゴシにしたりします。南蛮漬けもいいと思います。昔はヨツアミでひいていました。実際見たことがないのですが、四角の網を沈めて、中央の餌に集まったところを引き上げる取り方です。














魚・さかな・肴(10)〜鯖〜(2004年7月号)

 鯖は祝島ではそれほど沢山は釣れませんが、夏の丸アジ釣りや、アジ釣り、鯛釣りに釣れることがあります。
 イケマの中で泳いでいる鯖はみどりがかったきれいな色です。鮮度が落ちやすいので、鯖の生きぐされと言われることがあるようです。その鯖も生きが良いと、刺身が好きという人も多いです。味などに比べると口当たりがツルツルと言う感じです。口当たりだけを言うと、塩水でアジの刺身を作るとこんな感じになります。
 我が家での人気調理法は、しめ鯖です。塩で何時間かしめて、酢に1〜2時間漬けてできあがりです。昆布に巻いておくと味がもっと良くなります。数日は旨い味が保ちます。私のはいいかげんな作り方ですが、下関の伯母さんが作ったしめ鯖は大変旨かった記憶があります。脂ののった鯖(東シナ海の鯖)とたっぷりの塩とたっぷりの酢とたっぷりの昆布をちょうどいい具合に時間をかけて、感も使って作っていたのでしょう。
 その他、塩焼きも、ショウガとの煮付け、味噌煮も旨い魚です。
 先日、ウヤシマ(祝島の近くの無人島)で鯖が涌いているところに出会いました。

























魚・さかな・肴(11)〜タチ〜(2004年10月号)

 刀に似ているから「太刀魚」、立って泳ぐから「立ち魚」。どちらもそれらしい名前で、銀色に輝いている長い形は「太刀魚」で、海の中で立ち泳ぎをしている姿は「立ち魚」と呼んでもふさわしいようにおもいます。海の中を見るのはほんの一部の人でしょうから、「太刀魚」が一般的だと思います。
 実はこれを書きながら、タチは上を見て立っていたのか、下を見て逆立ちしていたのか思い出せないでいます。タチ用の釣り道具に釣れる時を想像したり、海面を飛びはねる様子からは上を見て立ち泳ぎをしていると考える方が納得しやすいのですが、頭の方が重いので下を向いていて、エサなどにはそれ相応の動きを見せるのかも知れ
ない、と両方の姿が思い浮かんできます。
 子供の頃、祝島でもイワシ網をやっていて、イワシと一緒に獲れていました。あの頃は煮るか焼くかだったと思います。子供の頃から印象に残っている魚の一つです。
 この頃のタチの釣りは、延縄のように枝を50本くらい付けて底を引っぱります。エサはデンゴがいいようですが、疑似餌も使います。穴子のしっぽがデンゴよりも保ちがいいのですがなかなか手に入らないようです。引き上げるのは専用の電動モーターです。
 朝晩の暗いときなら疑似餌で海面近くを引っ張って釣れます。昼間は砂泥底の方にいるのが、朝晩は表層に上がってエサを摂るようです。港の中まで入る事もあります。
 味の方は、白身で淡白ですが脂も沢山あってうまい魚です。調理もしやすく食べやすく重宝です。煮る・焼くは、はらわただけ出してぶつ切りにすればいいし、刺身でも三枚に下ろして皮付きのまま切っても大丈夫です。勿論皮をとっても、皮の鱗粉をカナダワシで擦り落としてもいいのですが、そのままでもいけます。南蛮漬け、唐揚げ、ムニエルなどもいいです。背鰭、尻鰭(退化して骨だけ)の骨を切りだしておくと食べやすいと思います。
 歯は太刀と言うよりカミソリのように切れます。
(刺身の写真で右側が皮付きです。)

右側が皮付きです。