中間貯蔵施設建設についてのコメント

2023年8月1日の報道によれば中国電力は、上関原発予定地の一部を使用済み核燃料の中間貯蔵施設にすることを検討しているとのことである。
以前からそのような気配はあったのだが、中間貯蔵施設建設には反対である。その理由を整理してみた。

1危険性について
 中間貯蔵施設は使用済みの核燃料を一定期間貯蔵する施設である。使用済み核燃料というのは猛毒で危険なプルトニウムを含むいわゆる「死の灰」である。中間貯蔵(一定期間)とあるが、結局は無期限になると推測される。
公表された高レベル廃棄物の量は

 高レベル放射性廃棄物の原材料(2023.3現在)

 ガラス固化体

  東海再処理施設   354

  六ヶ所再処理施設  346

  六ヶ所管理施設  1,830(返還分フランス1,310本 英国520)

 使用済み燃料

  六ヶ所再処理施設 2,970tU(3,710本相当)

  各原発計    16,510 tU(20,640本相当)

 計       約27,000本相当

  その他返還予定や高レベル廃液併せて約3,000本分合わせると約30,000本分ということである。
 

原発が排便した便槽がいっぱいになったけど処分も廃棄もができなくて困った状態というわけである。
 どのように格納しようが、放射性物質が危険であることに変わりは無い。一番わかりやすいのはテロ、ミサイル着弾、航空機墜落などでの爆発だろう。容器の劣化も想像しやすい。拡散すれば取り返しのつかない惨事になる。基地のある岩国市長はいち早く反対を表明した。
 原発同様取り壊すことのできない物であり、取り壊すことができない物を作るべきでは無い。容器は50年保つと言うことだが、放射線による劣化の時間経過の実証は無いといえる。時間が経過するほど容器からの放射能漏れは多くなることは間違いないだろう。


2
原発建設、原発稼働推進に連動 
 原発の稼働により増え続ける核燃料廃棄物は、原発稼働推進のブレーキになっている。原発を推進したい電力会社などは、核燃料廃棄物は処分できないから貯蔵で逃れようとしているわけで、貯蔵施設受け入れは、原発建設・原発稼働を推進することに他ならない。原発に反対する人が貯蔵施設を受け入れられるわけが無い。

3取り返し不能性
 原発関連の施設は、稼働すれば後戻りはできない施設である。自然界には無くなった猛毒の放射性物質を作りだし、その周りの物を放射能で汚染し、汚染した施設は簡単に取り壊すこともできず、処分も難しい。汚染したまま元に返すことができないものは作ってはいけない物である。

4環境破壊
 放射性物質は放射線を出す物質である。どのような入れ物に入れようが出し続けている。出す量が安全ですと行っても、誰も安全を確認した人はいない。中間貯蔵施設の歴史は無いに等しい。入れ物が長い間安全を保ち続ける補償もないといって良い。常時空気を汚染し、事故でもあれば、瀬戸内海は死の海になる。上関町だけの問題では無い。
 自然が宝物の上関にこれほどふさわしくない施設はないだろう。
 陸奥の中間貯蔵施設の例では縦横それぞれ300メートル以上の敷地である。長島にそれほどの平地は無い。1つの小さな山を削らなくてはできないほどの広さである。長島にとっては物理的にも環境破壊は大きい。港湾施設、運搬のための専用道路もまたしかりである。

5観光価値減少
 中間貯蔵施設と豊富な自然のどちらが観光価値があるか。中間貯蔵施設の見学者は推進派の町議員くらいだろうが、きれいな自然があれば何倍もの観光客が尋ねてくれることは確実だ。使用済み核燃料のある町はかえって避けられるだろう。原発資料館などは入場者に景品などがあり観光客寄せに力を入れていると聞くが、自然の魅力をアピールしたい町にはそぐわないのではなかろうか。

6将来故郷消滅
 放射性物質の貯蔵された町に帰省したいと思う人は少なくなるだろう。中間貯蔵施設をやすやすと受け入れた住民の住む町に、成長した子供・孫に帰りたい気持ちが募るだろうか。お金で自然を売った人の住む町は捨てられるのではないだろうか。中間貯蔵施設建設推進を押し返して、工夫で耐えて、自然を残した方が、出身者の故郷感は高いだろう。自然が豊かに残れば、町に住民がいなくなることは考えられない。中間貯蔵施設があれば住民が将来いなくなることは考えられる。

7誇り消失、呵責・慚愧の念などの滲出
 町の自然・安全゛・安心・環境をお金と交換し、平然として居れる人がどれほどいるだろうか。なにがしかの後ろめたさ、誇りの消失、呵責・慚愧の念など心の中に生じるのではなかろうか。明るい町である上関町に暗い影を少なからず落とすことが想像できる。

8住民分断
 原発建設の是非をめぐって40年あまり推進・反対の間で激しい対立があった。原発建設の是非の問題は、推進の話が起これば、対立が無ければおかしいほどの重要な問題だったともいえる。原発建設による分断が完全に払拭されたとはいえない現時点で、さらに中間貯蔵施設の問題が起こることで分断が再燃する事が危惧される。住民間の分断は最小にとどめなくてはならないと思うが、行政(町長主導の役場)には非協力的にならざるをえない。