おらが読書メモ1

(1996年頃のメモ)(追加青部分2003年)

「日本環境報告」(朝日文庫 本田勝一著)の中にリゾートについて書かれてあったので、そのことを祝島に当てはめながら書いてみる。

1.内容
☆真のリゾート地域の要素(日本環境報告p357)
(1)他の地域にない豊かな自然
(2)美しい町並み
(3)あたたかい人情
(4)独自の文化
(5)長期間家族で滞在できる安い費用
「大規模で高価なリゾート施設で企業が利益を上げようとすれば、市民は高い費用で短期間、それもディズニーランドへ行くのと同じような調子のリゾートになってしまう。」
「一見すると、莫大な投資をやり、はなやかに都市化して、施設がいっぱいできるが、そこで生まれるプラスは巨大な資本がとっていって、地元には社会的剰余が十分に落ちない。」
「もうひとつは、客観的に見て開発に成功しているのはどういう方式かということです。たとえば、大分県の由布院を典型としているような地域開発の成功例があります。これらの地域は大規模開発のための外からの資本に依存せず、地場の資本と自治体を中心にしている。これを私たちは内発的発展と言います。コンビナートを誘致するというのは外来型開発と呼んでいるんです。外来型開発というのは、初期には非常に華やかに発展しているように見えるんですけれども、長い目で見ると成功した例というのはほとんど無いんですね。」

2.感想・思いつき
☆真のリゾート地域の要素について祝島に当てはめて考えてみると、
(1)他の地域にない豊かな自然について
 ア 祝島は瀬戸内海国立公園の中にある。海は、瀬戸内海では透明度が最も良い所に位置する。
     暖地性の植物が多く見られ、県内では珍しい植物もある。
     海岸は三分の一ほど舗装道路があるが、三分の二は磯浜である。
     島の周囲役12q。船でゆっくり一周するのに約一時間。
     カヌーでゆっくり休憩しながら回れば約四時間。
     徒歩で回れば、六ヶ所くらい泳いで5時間くらいでゆっくり行ける。
     島の東半分は段々畑が見られ、西半分はほとんど雑木林に覆われている。
 イ 四季折々の自然
   春 春先の海岸近くに菜の花が咲き乱れ、磯でナマコが取りやすい。
     4月初旬に山桜が咲く。磯ではわかめ、フノリが採れる。
     5月には島の緑がきれいで、サンショの葉、三つ葉、片栗(ウバユリ)の根が採り頃。磯の小魚が活発。
   夏 初夏 ビワの実、梅の実がうれ、夜ヒメホタルが飛び交う。海ではイカかご漁が最盛期。
      船で丸アジ釣りが始まる。
      6月の初旬〜中旬に運が良ければ砂フグの産卵が見られる。
      7月になるとコオニユリが咲き初め、7月下旬にはアカイカが掛かる。台風がやってき始める。
      8月になると船でタチ、キスが釣れる。干しダコ作り最盛期。台風の影響を2回くらい受ける。
   秋 船でヤズが釣れ、ツクツクホウシが鳴き、ウシビタが熟れ秋が始まる。
      ヒヨドリの群が海を渡り、野鳥も増える。
      10月にはアケビが熟れ、船で鯛が釣れる。モイカが掛かる。
      11月には山にウベが熟れ、ミカンが熟れ始め、ビワの花が咲き始める。
      ノジギクの花がいたるところに咲く。コッコーの実も充実。
      ヤズが1s近くになる。
      秋の終わりに紅葉がまばらに見られる。ハゼが赤い。
   冬  島全体は茶色っぽくなる。山道は歩きやすくなる。
      冬の蛸壺漁が始まる。
      年の暮れから水仙が咲き始め、道端や藪の中にマンリョウが赤い実を付けている。
      2月には梅が咲き、山吹が花を咲かせる。
      磯のヒジキが伸び、カメノテ、カキが取れ、うまい。  
   祝島の特色ある植物
      ケグワの大木(山口県天然記念物指定)、アコウ、ミヤコジマツヅラフジ、コウラボシ、ナシカズラ(コッコー)、ウバユリ(根から上質の澱粉をとる。)、ニガモモ(桃の原種に近いものらしい)など      

 (2)美しい町並みについて
  ア 石垣
    人家の塀や壁が石垣によって作られているところがかなり残っている。
    この石垣を描きに来島する人がよく見られる。
    夏の台風時のマジ、冬のニシから、また火から家を守るためである。
    また、山の段々畑も石垣によって作られている。
    高い石垣は十数メートルもある。急斜面で、できるだけ広い畑を作ろうとの意欲の結晶に思われる。
    学校の敷地を確保するための石垣は他で類を見ないような立派なものである。残念ながら約三分の一は、石垣が歪んだためコンクリートで補強されている。
  イ 密集した家並み
    人家を船から見ると狭い平地から斜面にかけて家々が重なっている。
    人家を歩いてみると密集した家々の間を小さい道が入り組んでいる。
    小さい道は「あいご道」という。すれ違うのが難しい「あいご道」もある。
    小高い所(ノゾキ)からの家並みは魚の鱗のようである。
  ウ 沖合の島々、本州の山並みなど
    人家の前面約3qの沖合に鼻繰り島とそれに続く長島が間近に見え、その後ろに本州の山並みが続く。
    長島の左に叶島、佐合島、馬島、牛島、尾島、の島々。
    長島の後ろから右に、平郡、天田島、八島、ウヤシマ、コウジロがある。
    人家の裏側には、祝島の属島として、小島、小祝島があり、遠くに姫島、国東半島が見える。
    人家の南側の山道から、晴れた日には、四国の佐田岬半島、九州の佐賀関半島もよく見える。
 (3)あたたかい人情
   助け合うことで生活を支え合ってきた島ならではの人情があり、道であう人ごとの挨拶は、それを感じさせる一つである。
   お年寄りの、子ども達に向ける目は大変優しく、あたたかい。
 (4)独自の文化
   離島であることにより、古い時代の名残が濃く残っている面がある。反面、気候の温暖なこと、酒造りなどの出稼ぎに出る人が多かったことなどにより、進取的な面が見られる。
   ア 方言ついて
     子供には薄れているが、老人は祝島独特の方言で話す。
   イ 共同体としての生活
     家の建築・解体作業、進水式(船おろし)、葬儀・法事等の作業や準備を共同で行うことが慣例になっている。
   ウ 神舞神事
     大分県伊美神社との交流祭儀。
     山口県指定無形文化財である。
     神舞(神楽)を舞う舞い場(神舞ごや)も島の人たちの共同作業で作る。
   エ 文献など
     万葉集
       「家人は 帰り早来と いはひ島 斎ひ待つらむ 旅行くわれを」
       「草枕 旅行く人を いはひ島 幾代経るまで 斎ひ来にけむ」
     赤い雲伝説殺人事件
     瀬戸内「離島物語」
    オ 絵画など
      松田正平「周防灘シリーズ」に祝島を題材にした作品が多く描かれている。
  
 (5)長期間家族で滞在できる安い費用
    今のところ旅館が二軒と民宿が一軒ある。
    家族で長い期間の滞在を考えて進めることはこれからの課題である。
    旅館、食堂の経営がこれからの課題でもあり、働き口の確保にもつながる期待もある。
 (6)その他
    特産品・収穫物について
     山  ビワ 実は5月末から6月中旬までが出荷の最盛期。
        ミカン 10月下旬から12月まで
        伊予かん 1月〜2月
     海  漁種 タコ、コウイカ、タチ、ヤズ、タイ、アジ、サヨリ、ハゲ、キス、メバル、ホゴ、ボテ
            コイチ、ギダ、メダカ、ハデンボウ、ナマコ、サザエ、アワビ、スズキ
     加工品  ビワ茶、海産物の燻製・干物各種、ヨモギ饅頭、ビワ羊羹、ヨモギ羊羹
            21世紀に祝島味噌が誰かによって造られ、販売されているかも知れない。
     磯  セトガイ、カメノテ、ニナ、ヒジキ、ワカメ、アオサ、フノリ、テングサ、ツルナ
     木造船  新庄造船所で現役の船大工が仕事をしている。人間島宝である。
    方言について
     ザ行がない。
     アクセントに独特のものがある。
     (詳しくは「祝島ホームページ」の祝島弁辞典で。)         

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