運をつける生き方「陰徳」を語る
長州教育サークル 八代真一 2000年7月25日更新
平成13年5月、家庭訪問の時に、ある母親が言った。 「先生が学校便りに書かれた「陰徳」の話はすばらしかったです。 何枚もコピーして、家に来られた人に手渡しています。」 2001年5月12日 |
以前同僚だった養護教諭より電話があった。
何のことかと思ったら、私が以前話したことのある水泳選手の話がもう一度聞きたいとのこと
であった。
中学生に是非とも聞かせたいというのである。
人として生きていく上で、運をつけていくこととは、具体的にどうすること
なのかを子どもたちに伝えるエピソードである。
以下、エピソードを述べる。
1 オリンピックのファイナリストには実力差はないが、運の強さの違いはある
田口信教という水泳選手を知っていますか。
1972年オリンピック、ミュンヘン大会、平泳ぎの代表選手です。
100メートル男子平泳ぎで金メダル、200メートル男子平泳ぎで銅メダルをとり
ました。
以前、先生は田口選手の講演会で話をお聞きしました。
田口選手は次のように言います。
「オリンピックのファイナリストになれば誰が金メダルになってもおかしくはない。
実力の差はない。
しかし、金メダルになる人間は、いつも金メダルになる。
そして、8位になる人間はいつも8位である。
実力差はないのに、不思議とこうなる。
実力以外の何かが、そうさせるとしか考えられない。」
また、次のようにも言います。
「金メダルと銀メダルでは、天と地ほどの差がある。
一般の人にはわからないと思いますが、たとえば、日本で一番高い
山は富士山ですよね。では、2番目に高い山は?
世界で一番高い山はエベレスト山です。では、2番目に高い山は?
このように、1番と2番では違うのです。
世界一位と世界二位では、有名さも、その後の経済活動などにも
差が出てくるのです。
それで、オリンピック選手は金メダルを目指します。
しかし、本当に「運」としかいいようのないことが起きるのです。
ゴールのタッチが爪の差で、金メダルと銀メダルに決まってしまうこと
も、たくさん見てきました。」
さらに言います。
2 田口選手が実行した運を強くする方法
「そこで、オリンピック選手になってから、どうしたらこの「運」というものを身につけるのか考え
え、実践しました。そして、金メダルをとったのです。」
田口選手は、どのようにして運をつけてきたのでしょうか。
彼は、オリンピックの代表選手の合宿所の生活のことを話してくれました。
それは一言で言えば、「善い行いをする」ということです。
ただし、田口選手がすごいのは、ただ善い行いをするのではなく、
人に知られないように善い行いをする |
ということだったのです。
彼は、毎日、誰にも知られないように、合宿所の皿洗いを続けたそうです。
合宿所のおばちゃんに見られそうになっても、うまくごまかしました。
それから、落ちているゴミも人に知られないように拾ったそうです。
まわりをキョロキョロしながら、人に知られないようにサッと拾ったそうです。
このようなことを昔から次のように言います。
陰徳(と黒板に書く) |
「いんとく」と読みます。陰はかげです。徳とは善い行いのことです。
つまり、は、人に知られない善い行いのことです。
先生はこう思います。同じ善いことをするのなら、人に知られないほうがいい。
なぜか?
人に知られた善い行いのご褒美は人から来ます。「ありがとう」と言ってもらって
場合によっては、御礼の品も受けますよね。人から直接ご褒美をもらったので、
そこでお仕舞いです。
しかし、陰徳を積めば、ご褒美はおてんとう様から来ると思うのです。
陰徳は人が知らないので、人からはご褒美はもらえません。
だから、おてんとう様が、その人の「運」として貯金してくださると思うのです。