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〜注:035から続いています。〜
スケートも一段落し、施設内の休憩室で休む事にした6人。
ここでもやはり、話題となったのは柊についてだった。
「やっぱ私服って制服とは一味違うよね〜」という、
女性陣からのオヤジトークで盛り上がっていたところに…
「…柊さんって、ズボンしか持ってなさそうなイメージだったよ」
と雄哉がボソッと呟いた。
「ま、まぁな…私が持っている中でも、数少ないスカートがコレ」
と、顔を赤らめながら答える柊。
そこに、ニヤけた美紀子が横槍を入れる。
「だけど、スパッツは邪道よ〜。女なら!…むぐっ」
不穏当な発言が続くと察知したのだろう。
加奈がすかさず美紀子の口を塞いだ。
一方の柊は、その迫力に圧倒され気味になっていた。
「はいはいはいはい、どうどうどう」
加奈に促され、着席する美奈子。
「…まぁ、アレよ。百合ちゃん。学校でもスパッツなの?」
「ん…そうだけど…」
「ふむー。だけど、百合ちゃんが
スパッツ穿いてるなんて誰も知らなかったよねぇ?」
「…いや…俺達に聞くなよ」
「とまぁ、こう言ってるんだし、
スカートだからってビビってちゃダメよ。女として」
力説する美紀子。
すると…
「…美紀子のはもう見飽きたけどな」
「ばっ、バカ!余計な事を言…」
と、俺が言い終わる前に涼の脳天に美紀子のチョップが炸裂した。
涼はそのまま、床に倒れこんでしまった。
「…タツ」
美紀子が、おどろおどろしい声で俺を呼びながら振り返った。
「…今まで、見てた?」
「あ…ぁ…まぁ…あんだけ暴れてりゃな」
美紀子のおてんばっぷりは、幾つもの伝説が残っているほどだ。
3階のベランダから2階のベランダに飛び降りただの、
男子3人相手に素手で勝っただの。
「むぅ…控えないとな…」
そう言って、美奈子も顔を赤らめながら椅子に座った。
…一撃や二撃は覚悟していたが…ちょっと複雑な気分になった。
「…ちっがーーうっ!!」
場が落ち着いたと思ったら、美奈子が再び立ち上がった。
「スパッツは邪道なのよ!綱紀粛正として…」
邪笑を浮かべて柊を見る美奈子。
明らかに柊は怯えている。
そして、助けを求めるように加奈の方を見たが…
「…面白そうねぇ♪」
形勢変わらず。
二人は立ち上がり、柊ににじり寄る。
「う…うわっ!葛名!助けろ!」
いきなり真横に座っていた俺の背中に回りこむ柊。
肩に乗せられた、火照った手。背中越しに聞こえる吐息…って!
だから!こんな状況でくっつかれたら…
「タツ〜…どくわよね?」
「素直に百合ちゃんを渡した方が身のためよ〜…」
迫りくる美奈子と加奈。
たまらず、涼に助けの目線を送ると…
「…俺は面白くなりそうな方に加勢する!」
と、俺と柊を無理やり引っぺがした。
「わっ…ちょっ!やめっ!…あーっ!」
成す術も無く女子トイレに連行されていく柊。
涼に羽交い絞めにされてもがく俺。
…そして、それを傍観する雄哉。助けろよ…
数分後、トイレから3人が出てきた。
美奈子の手には、黒いスパッツが握られていた。
柊はと言うと…他の2人の後ろから、スカートを抑えながら歩いてきた。
「うぅ…落ち着かない…」
耳まで真っ赤になって椅子にうずくまる柊。
「…美奈子。ナニをスパッツ見つめてるんだ?」
「いやー…2〜3万くらいなら売れるかなぁって、これ」
「売っ!?」
「あー…そんだけ出す価値あるよなぁ〜。なんたって柊のだし…」
「や、やめんかっ!そんな会話!」
怪しい談義を繰り広げる涼と美奈子。
即金出そうかと思ったのは、永遠の秘密だ。
「いやぁ〜、コントラストの映える色でしたなぁ♪」
「か、加奈ちゃんまでー!」
「ふ〜む、白系か〜」
さらにオヤジと化す涼。
…が、ふと、涼が俺に目配せをした。
何のだ?と思っていると…
「…薄紫♪」
ボソ、と美奈子の耳元で囁いた。
それを聞いた瞬間、走り出す涼と美奈子。
2人はリンクに出て、涼は軽やかに逃げるが、美奈子は全く追いつけない。
「待てぇーーーー!!!」
柊のスパッツをベンチに放り出して…ん?
これは、今のうちに柊に返しておけということか?
「…雄哉。加奈を抑えときなさい」
俺が加奈を指さした次の瞬間には、雄哉は加奈の上にのしかかっていた。
「…そういう抑え方はマズいと思うけど…柊、これ…」
「…あ?あ、うん…すまん」
ここまで一気に話が進んで、ついてこれなかったのだろう。
柊は半分放心していたが、はっと我に返ると、そそくさと女子トイレに入っていった。
「そんじゃ、ま、帰るか」
散々美奈子を玩んで満足したのか、涼はすっきりした面持ちで帰ってきた。
その後ろには、満身創痍になった美奈子がフラフラとついてくる。
「あ、夕食食べに行こうよー」
「おぅ、いいねぇ」
…ここで、思い出したくない、だけど思い出さなければならないことを
思い出してしまった…
「…帰りもバイクか。俺は…」
「…そうなるな。まぁ、今のうちに飯食う場所決めておくさ」
「ファミレスあたりでいいんじゃな〜い?」
追いかけっこをしなかった分、元気が有り余ってる加奈は、
もう食事の事しか頭にないらしい。
「…柊。帰りもバイクでいいか?アレなら美奈子と代われるけど…」
そう聞くと、柊は少し考えて…ふるふると首を横に振った。
そして、少し俯く…うぅ…ヤバイ。すんげぇ可愛…
「タツが獣だー!」
「ぐはぁ!」
元気が戻ったのか、美奈子のボディブローがモロに入った。
「うぉぉぉ…疲れてたんじゃなかったんか…」
「もう靴を脱いだのだー」
足の疲労を差し引きしても、普段以上のダメージ…いや、
疲れているから力のセーブが効かなくて…
…などと考えながら蹲っていると、心配になったのか、
柊が屈んで俺を見た。
「あ"〜…大丈夫。なんと…」
そう言って、体を起こそうとして…やめた。
「…うわぁ!百合ちゃん、その座り方はマズイよ!」
とっさに加奈が柊を立たせる。
…うん、振り向けません。
スパッツ穿いてたから良かった…のかな?
その後、それに気づいた美奈子からもう1撃イイのをもらったりしながら、
俺達は岐路についた…
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