(6)内地で最初の「北大耳蝙蝠」

前號に發表せる稀有の尾長のカウモリの名稱は北大耳蝙蝠(キタオオミヽカウモリ)學名タヾリダ・ラトウケイと判明した。内地では最初の發見で，其産地は��岡縣沖ノ島附近で，島根縣の隠岐の島ではなかつた。玄海洋にありて關釜連絡船が其側を通過する漁船碇泊中薄暮１匹の大なるカウモリが飛翔するのを見たが，翌朝に魚箱内に潜伏せるものを捕獲したのである。從來外國人の二三の研究家に依つて臺灣(台湾)海峽で１回採集せられ，又浦塩と秦皇島とで１回得られた位のもので，其數も頗る少数で，我國の斯界の權威者からも珍しがられてゐる貴重な標本である。近く新産地として學界に發表する豫定である。尚今回のは雌であつて胸部に人類同樣に一對の乳房があつた。之で幼獣を哺育すること勿論である。

【「萩文化」昭和１９年(1944)６月号】

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