(13)大東亞の珍鳥2種「大極樂鳥」と「犀鳥」


 私の博物館内に陳列せる大東亞海の生物標本に禽獣蟲魚色々あるが,今回鳥類の2種につき記載することゝした。
(1)大極樂鳥
 之は,ニューギニア及其附近の島嶼の特産で,其名に相應しい極美の鴉(からす)ぐらいの鳥である。觀覽者をして何時も「之は立派だ之は綺麗だ」と賞嘆せしむる,嘗ては美しい其猪ムが歐米の貴婦人の帽飾りとして高價に賣買されたこともあつた。此鳥仲々のダンス好きで,獵師が此鳥を捕獲するのは此舞踊に夢中になつてゐるときが狙ひ時であると云はれる。
(2)犀鳥(サイチヨー)
 比島か島東印度にかけて棲息する珍妙な嘴の持主で,私は2つの種類を所持するが,こゝに示したのが其代表的のものである。頭の中央に一箇の兜形の大突起のあるあたり,獸類の犀の角に似てゐるので此名がある。又嘴だけでも角そつくりであるのでホルンビル(角クチバシ)の別名さへある。長さ3尺(90cm)位で,殆ど全部がK裝束で,正に密林の間者と云つた格だ。其習性の面白いのは,繁殖期になると,雄は雌の抱卵する巣の周圍を塗りこめて幽閉してしまひ,僅かばかり開いてある穴からセツセと木の實などの餌を雌に運んで入れてやると云ふ親切振りである。
【「萩文化」昭和17年(1942)8月号】

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