短歌のページ1

 【祝島を詠んだ歌】
 天平八年(七三六年)新羅に赴く使節一行が航行中
 <周防国の玖珂郡の麻里布の浦行きし時に作る歌八首>の中
 「家人は 帰り早来と いはひ島
            斎い待つらむ 旅行くわれを」

 「草枕 旅行く人を いはひ島
            幾代経るまで 斎ひ来にけむ」

1999年夏休みより この年は短歌になりました。

「山からの 西瓜を午後に 海からの
    チダイを夕べに 囲みいただく」
 
「道果てて 荒ら磯続く 島の浦に
     ハマナタマメの 陽の中に咲く」
「ゴンゴンの パパと呼ばれて 若返り
      はねてとんで おらが骨きしむ」
 
「夏ごとに おらが力の 減るよりも
      子供の鮮度が 越ゆるを祝ふ」

 「星空を 寝そべり眺め さそり座と
        仲良くなりし 夏の屋根上」

 「鉈マメの 風にも負けず 咲く花の
           赤紫の 小さく輝く」
 「コオニユリ 徒歩にてゆきて 仰ぎ見る
        崖の高きに 夏の陽に染まる」
 
 「岩に咲く フジナデシコの 一束の
         海と空とに 捧ぐが如く」

 「雨降りの しみじみ音を 聞かずして
        晴れに憧れ 今日を湿らす」

 「何となく けだるい夏は 時のみが
      ただ何となく 過ぎていくのみ」

 「窓に降る 夏の雨にぞ 誘われて
       浮かべし幼き頃の浜の松」

「負うた子に 図鑑の見方 教えられ
      釣れない魚に 出会う荒れの日」

「南風吹かば 重い気持ちに 波の花
          小郡よりの 夏の訪れ」

「誠なる 瞳の輝き おらが目に
     焼き付き今も 思い起こせし」
 
 「しりすぼみ ラッパになるか この夏は
         時の不思議は 今は解らず」
 
 「夏来たり サザイとビール 友にして
         思いいずるは 海の輝き」

 「瀬戸内に 夏きたるらし うろたえの
           雨の夕方 灯りけむりぬ」

 「人の世に もまれて強く なるすきに
           ずるさのしみが しのび寄り入る」
 
  「雨の日に 祝島出で 美しき
           描けぬほどの 沖の島霧」

 「面影に ひたりし淡き 横顔の
          微笑みなれど 悲しみぞ湧く」
 「一昔前に山道 木を乗せて
       慣れぬ耕耘機(テーラー) 崖を登りぬ」
 「山からの 風に吹かれて 見る星の
            灯りなれども 悲しみぞ湧く」
  「遠きより 南の魚の訪れて
          小さききらめき 夏に残しぬ」
 「ひさかたの 雨の上がりて 瀬戸内の
          海のはるかに 国東の山」
 「あびき寄す 島の荒磯 石鳴りて
            南の海の 嵐知らせん」
「故郷は 近きに居りても 想うもの
        老いゆくほどに ぬくもり求むに」
 「ぬくもりの 消えた瓦に 寝そべって
            流れる星の 涼しさ数ふ」
「前を行く 子供の姿に 重なりし
           幼き時も ともに愛しき」
 
  「磯浜を 子と話しつつ 伴にいく
           変わらぬものぞ 満ち引きの海」

「盆踊り 輪を作る子の なつかしき
         親のおもかげ われも幼き」

 「盆踊り 老いも若きも 笑みの顔
        すぎさりし日の 重さ忘れて」

 「夕暮の 潮風のなか 濡れた瀬に
           足を取られて 磯の香増す」

 「打ち上げし アラメの磯の 潮だまり
             南風と入り込む 旅の小魚」

 「夏の雨 一時暑さ 押しやりて
          窓辺の音に うと舟を漕ぐ」

  「静かなる 海面はゆるく たゆとうに
            戸惑うほどの 魚の激しさ」

「静かなる 海面をにわかに 騒がして
            秋を従え ヤズ島に寄る」

「留守番の 娘の作る 昼食の
         心こもりて ぬくもりにけり」

「友ありて 京より島に 訪ね来て
        はるかな駿河の 友をも囲む」

「古の 海を渡りて 行く船を
          思い浮べて 海を眺める」

「甲板の 上で手を振る 古き友
         出ていく船の 遠くなるまで」

 「うす青の 移りて淡き 紅色の
          人ぞ恋しき 夕の西空」

 「ほろ酔いに 口ずさむ唄の わびしさに
            酔いがまわりて 草臥れにけり」

 「ひさかたの 雨の波止場に 傘持ちて
           たたずみて待つ 船降りる人」

 「海を見て 海に育って 海辺に居
          どこかに海の 匂いを付けて」

 「夏休み 外から便り 島にきて
           思いがけずの 島をまた知る」

 「夏の海 締め括るのか 秋開くか
            鯛舞い踊り 鯵がきらめく」

 「おらが夏 休みを終えて 島影に
          あんたがおって おらがいて」
 

 「おらが夏 海にひたって 入道の
           額に汗の 瀬戸内の海」

 「瀬戸内の 海に織りなす 陽の光
            いくおらが夏 秋風ぞ吹く」
 

 「幼い子と 遊ぶ子供の 優しさに
          おらが心も 和らぎにけり」
 
 「夏の山 みんみん蝉の 鳴く声に
          濃い紫の ウシビタ実る」
 
 「釣り糸に 伝わる魚の たくましく
          高まる心 高き太陽」
 
 「ひよどりの 渡る瀬戸内 祝島
          海は豊かに 鯛の寄るらむ」