短歌のページ3 夏休み2002の1   より

「この夏に 海と山とに 親しんで 島の匂いを 身にぞつけなむ」

「常緑の 林の中の 落ち着きの 深さの中に 大樹の立つ」

「夏モヤの 中をいく船 絵のごとく 遠い旅路へ 瀬戸内を出ず」

「長島の 夏の盛りに 汗をかき 柳井の夕陽を 肴に一杯」

「祝島 中腹の田に 稲の花 石垣に抱かれ 豊かに咲く」 

「あいご道 黒猫の歩く 練り塀に 隠れごをして 遠き昔は」

「道端の 山の草木の 勢い良さに 押されて林の 静けさに入る」

「荒磯の 岩間に潜む 赤ウニを とりて夕餉の 糧に話に」

「何処より 流れ寄る木を 焚き火にし セトガイを焼いて 子供と食べる」

「小魚の その魚なりの 味がして 夏の心地の ちびっと深まる」 

「祝島 水打ち際の 後先に 山の囁き 海のさざ波」

「梅雨空の 北に流れて 青空に 名残の雲の 島の夕暮れ」

「周防灘 青の中ほど 浮く島に 海の流れや 時やら揺れる」

「田ノ浦ゆ 泳ぎい出で見れば まばらにぞ 西風の波間に 島影ぞ見ゆ」

 「瀬戸内を 行くバスの窓 夕暮れの ゆらゆら揺らぐ 過去とうつつ」

「短パンを 買って颯爽 町を走る 振り返る人は 取り立てて無し」

「昼過ぎて 夕暮れ来る 釣り心 何処も同じ 夏の夕暮れ」

「トクモンの 椿の木の枝 巣作りの 坂の道端 南風にも揺れず」

「毎夏は 南風は夕暮れ ヨウイレと 言う習わしが 朝に南風吹く」 

「夕立に 暑さの和らぐ 山の道 歩いて気持ちの 良さのつながり」

「旅人の ゆく坂道の 木の陰に ウシビタの実の ムラサキの見ゆ」

「島人の 帰りはやこと いわいしま 幾夜飲んでも 話尽きけむ」

「おばさんの 帽子をかぶる おじさんの 姿に酔って 甥の寄り添う」

「阿波踊り 人波大波 踊る波 鳴り物の波に 酔いしれる波」

「阿波に来て 旅の中での ぬくもりが 心の内に 静かにしみこむ」  

「思い出の 中に過ごして 年月を 一時忘れて 若さ楽しむ」

「沈む日と 並んで帰る 瀬戸内の 海に包まれ 豊かさの涌く」

「細道の 月影のさす 夏の宵 島の娘の 窓越しに見ゆ」

「ゴロゴロと 昼寝の夏に 見る夢に せかされて出る 離れ小島に」

「本州の 静かに暮れる 町並みを 眺めて夕陽と 乾杯を交わす」

「夕方の 島影の間から 昇る月 静かに照らす 船の後先」

「波止内の 波打ち際で 釣り針に ニナを餌にして ひねもす一途」

「しめ鯖を 皆で囲んで 食卓に 晴れやかさこそ なけれどもよし」

「瀬戸内の 日の暮れていく 海を行く 赤から青へ 流れる中を」

「ウシビタの 粒の甘さの やわらかく つくつくほーしの なく声に重なる」

「潮寄せて 離れ小島に 釣船の 流れに揺れて 魚のはねる」 

「仙人の 雲に乗って 山裾を 渡る幻 島の青空」

「葉の裏の きれえな白が あだやかな 誰かに教えて やりたあような」

「台風が くるど来るどと 寄す波の ざわめきが太る 開けた窓から」

「祝島 灘から寄せて 来る波に 幾度も洗われ あらわれてある」